ウクライナ出身力士・安青錦、日本で初の大相撲九州場所優勝
ウクライナ出身の安青錦が来日3年で大相撲九州場所初優勝を果たしました。
大相撲九州場所の千秋楽、11月23日、関脇・安青錦(あおにしき あらた、21歳、安治川部屋)が優勝決定戦で横綱・豊昇龍(26、立浪部屋)を破り、初優勝を果たしました。ウクライナ出身の力士の優勝は史上初であり、欧州出身力士の優勝は約8年ぶりとなります。
安青錦の本名はダニーロ・ヤブグシシンで、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、18歳で日本に渡りました。
千秋楽で安青錦は大関・琴桜(28、佐渡ケ嶽部屋)に勝利して12勝3敗とし、優勝決定戦へ進みました。決定戦では低い姿勢で前に出続け、豊昇龍が引いたところを背中に取り、送り投げで勝利しました。
優勝インタビューでは、「来日から3年でこの結果に満足しているか」と問われ、「いや、これからだと思います。来場所では今場所に負けないような結果を出せるよう頑張ります」と語りました。
安青錦のしこ名の「青」は、ウクライナ国旗(青と黄)にちなんだもので、幕内には関脇の安青錦のほか、前頭十一枚目の獅司など2人のウクライナ出身力士がいます。
安青錦は7歳で相撲を始め、柔道やフリースタイルレスリングも経験し、ユースのアマチュア相撲大会で頭角を現しました。ロシア侵攻後は家族とともにドイツへ避難し、同年4月に単身で日本へ渡りました。日本語は当初できませんでしたが、大阪で知り合った関西大相撲部のコーチを頼りに稽古を重ねました。
技術力に優れ、他の力士があまり用いない技も決めることが多く、専門家やファンから称賛されています。
今年の名古屋場所では、相手の内ももを下から手で払い、体をひねって倒す「内無双」で大関・琴桜に勝利しました。先月にはロンドン公演で観客から大きな声援を受け、欧州出身初の横綱への期待も高まっています。
安青錦の優勝は、戦争を逃れて日本で努力を重ねたウクライナ出身力士が、短期間で大相撲の頂点に達した象徴的な出来事です。その卓越した技術と闘志、絶え間ない成長は、国内外で多くのファンを魅了しています。