トヨタ自動車は、悪路や山岳地帯などでの走行をより安全に行うため、小型ドローンを活用した新たな支援システムの開発を進めていることが分かりました。
米国連邦航空局(FAA)への申請資料では、ドローンが車両周囲を空撮し、運転者が地形や障害物を把握しやすくする仕組みが示されています。
申請書によれば、ドローンは車両の近くを低空で飛行し、地形や障害物、ぬかるみなどをリアルタイムで撮影・解析します。必要に応じて樹木の上空まで上昇し、広範囲の地形情報を取得できるよう設計されているとみられます。これにより、運転者が車外に出て確認することなく、安全な走行経路を把握することが可能になります。
トヨタは現時点で商用化の予定を公表しておらず、「あくまで研究・検討段階にある」と説明しています。
しかし、この構想は同社が掲げるモビリティの多様化戦略と一致しており、将来的な実用化に向けた技術的布石とみられています。
米国では2025年8月に、操作者の視線外での飛行(BVLOS: Beyond Visual Line of Sight)に関する規制緩和案が提示されており、承認されればドローンの商業利用範囲が拡大する見通しです。
トヨタもこの制度改定に関心を示しており、将来的な運用を見据えて開発を進めている可能性があります。
また、同社はこれまでにも空飛ぶタクシー(eVTOL)や自動運転システムの研究など、地上と空中を融合したモビリティ技術に取り組んできました。
今回のドローン支援構想も、災害時の救援活動や探査用途など、多目的な応用を視野に入れた技術として注目されています。
トヨタの小型ドローン支援システムは、オフロード車両の安全性と利便性を高めるだけでなく、「クルマと空」の新たな協働のあり方を提示しています。飛行時間や通信の安定性、制度面の制約といった課題は残りますが、それらを克服できれば、自動車業界におけるドローン活用の新時代を切り開く可能性があります。
現時点で商用化の予定は示されていないものの、トヨタのモビリティ技術への挑戦は引き続き注目されます。