AFP通信が入手した草案によると、ドナルド・トランプ米大統領が支持する28項目の和平案では、ウクライナが東部ドンバス地域をロシアに譲ることになります。
ルハンシク州とドネツィク州を含むドンバスを放棄するだけでなく、キエフは軍の人員を60万人に制限することにも同意するとしています。
草案によれば、欧州製の戦闘機はウクライナを防衛するためにポーランドへ配備されるものの、NATO部隊はウクライナ国内に展開せず、キエフはNATOに決して加盟しないことを受け入れるとされています。
一方、米当局が現段階では「作業文書」に過ぎないとしている同計画は、ロシアをG8に再び受け入れ、世界経済へ再統合する内容も含んでいます。
ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官は記者団に対し、
「大統領はこの計画を支持している。ロシアとウクライナ双方にとって良い計画だ」
と語り、トランプ大統領のスティーブ・ウィトコフ特使とマルコ・ルビオ米国務長官が約1か月にわたり、ロシアとウクライナ双方と静かに協議を進めてきたと説明しました。
また、同報道官は計画がロシアの過度な要求を反映しているとの懸念を否定しました。
ロシアを「世界経済に再統合」へ
AFPが確認した文書では、「アメリカを含む関係国は、クリミア、ルハンスク、ドネツクを事実上ロシア領として認めるとの文言が記載されています。
ウクライナは現在もドネツクとルハンスクの一部を保持しており、この2地域は戦闘の中心であるドンバス工業地帯を構成しています。
クリミアは2014年にロシアが併合を宣言した地域です。
草案によると、ウクライナ軍がドネツクから撤退した地域は非武装地帯とされ、ロシア軍はその区域に進入しないことになっています。
また、ロシアが併合を主張する南部のヘルソン州とザポリージャ州については、「前線に沿って凍結される」と記されています。
これらの内容は、これまでモスクワが示してきた要求と一致しています。
さらに、ロシア軍が占拠するザポリージャ原発は国際原子力機関が監督し、発電された電力はロシアとウクライナが分け合う形で使用されることが提案されています。
計画が実現した場合、ロシアは約4年間にわたる厳しい制裁を経て世界経済に再統合され、G8への復帰が認められます。
文書には、「ロシアは周辺国を再び侵略しないこと、NATOはこれ以上拡大しないことが期待される」とも記されており、もしロシアが再度ウクライナへ侵攻した場合は、強力で調整された軍事的対応と制裁の全面的な再発動が実施されると明記されています。
ゼレンスキー大統領は「尊厳ある平和」を求める
これに先立ち、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアとの戦争を終結させるいかなる合意も「尊厳ある平和」をもたらすものでなければならないと述べました。
ゼレンスキー大統領は「ウクライナは平和を必要としている。尊厳ある平和をわが国の独立、主権、ウクライナ国民の尊厳が尊重される条件であることが必要だ」と述べました。
欧米メディアは、米国の提案は「ウクライナが得るものが少ない一方、ロシアの重要な要求を受け入れる内容だ」と指摘しています。
草案は「クリミアやロシアが占領した他の地域の承認」を求めていると伝えられています。
ロシアはウクライナ領土の約5分の1を占領しており、その多くは長年の戦闘で荒廃している状態です。
クレムリンは、2022年にドネツィク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソンの4地域を、2014年にクリミアをそれぞれ併合したと主張しています。
モスクワは以前、ドネツィクとルハンシクからウクライナ軍が完全に撤退することと引き換えに、南部のザポリージャとヘルソンで戦線を凍結するよう求めていました。














