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高市政権の「新しい日本」戦略で重みを増すトルコとの関係
アジアで初の女性首相となった高市氏の政権下は、安倍政権期に十分に具体化しなかった日トルコ関係を再び活性化させる好機となっています。
高市政権の「新しい日本」戦略で重みを増すトルコとの関係
2025年11月22日、南アフリカ・ヨハネスブルグで開催されたG20首脳会議に出席した、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、高市早苗首相、インドネシアのギブラン・ラカブミング副大統領。/ 写真: ロイター
2025年11月25日

自民党の保守派議員である64歳の高市早苗氏は、今年10月の国会での投票を経て党総裁選で3度目の挑戦を成功させ、日本初の女性首相となりました。

安倍晋三元首相の側近としても知られる高市氏は、財政支出の拡大と緩和的な金融政策を組み合わせた「アベノミクス」の再生を掲げています。

また、高市政権の発足は、安倍政権期に十分に形にならなかった日本とトルコの協力関係を再び活性化させる機会となっています。

日本の防衛力強化と輸出管理の緩和は、急速に発展するトルコの防衛産業と方向性が一致しており、共同開発の機会を生み出すとともに、双方の戦略的自立性を高める可能性があります。

エネルギー安全保障も、両国の利害が交わる重要な分野です。地域のエネルギーハブとしての役割を担うトルコと、ロシア産LNGを含む多様なエネルギー源の確保を重視する日本の方針は、ユーラシアのエネルギー情勢に影響を与える体系的な対話につながる可能性があります。

また、トルコと東アジアをつなぐ「ミドル・コリドー」を活用したサプライチェーン強化は、日本が重要鉱物の確保や中国依存の低減を進める取り組みと軌を一にしており、中央アジアでのインフラ整備や連結性向上に向けた協力の基盤となり得ます。

外交面では、高市首相とエルドアン大統領はいずれも、大国間の不安定な力学を見極めながら柔軟に対応する戦略をとっており、両国を地域をつなぐ機動的な「ミドルパワー」として位置づけています。互いに異なる利害の調整役を担う点でも共通しています。

両政府がこうした機会を活かすことができれば、刷新された日トルコ関係は東地中海からインド太平洋にまで影響力を広げ、次代のミドルパワー外交を特徴づける存在となる可能性があります。

国内政治と高市早苗首相

奈良県で生まれ育った高市早苗氏は、政治家の家庭ではなく、若い頃はヘビーメタルのドラマーやテレビ番組の司会、スキューバダイビング愛好家、さらには車好きとしても知られるという、異色の経歴を持っています。彼女がかつて所有していたトヨタ・スープラは、現在、地元の博物館に展示されています。

1980年代、米議会議員パトリシア・シュローダー氏の下で働いたことが、高市氏の政治への関心を高める転機となりました。当時は日米間の貿易摩擦が激しく、その経験を通じて、高市氏は日本が米国の意向に左右されず、自らを守る力を持つ必要性を強く感じるようになったとされています。

1993年に初当選した高市早苗氏は、1996年に自民党に入党し、党内でも指折りの保守派として知られるようになりました。

その後、高市氏は経済安全保障担当相、経済産業相、総務相などの要職を歴任し、政権内で存在感を高めてきました。

2021年と2024年の総裁選では敗れたものの、2025年の選挙で勝利し、党のトップに立ちました。選挙期間中には、学校を訪問した際、「英国のマーガレット・サッチャー元首相のような ‘鉄の女’ を目指したい」と語ったことでも注目を集めました。

高市早苗氏は、夫婦別姓に反対し、同性愛者の結婚も認めない、明確な社会保守の立場を取っています。

一方で近年は、よりジェンダーに配慮した姿勢も示しており、子育て世帯への減税、ベビーシッターサービスの支援、女性や高齢者向けのケア体制の拡充などを提案し、これらの課題に取り組もうとしています。

こうした政策の背景には、家族の介護を経験したことが大きく影響しているとみられています。

高市早苗氏が就任した時期、自民党は相次ぐ不祥事や経済停滞、人口減少に加え、急速に勢力を拡大する参政党との競合に直面していました。

衆参両院で過半数を失い、党内からも厳しい批判が上がる中、自民党は有権者の支持を取り戻し、日本の国益を守る政党としての立場を再構築する必要に迫られています。

高市氏は「日本の現在と未来のために、自民党は変わらなければならない」と強調し、自身が安倍晋三氏(1954〜2022)の政治的・思想的な後継者であるという立場を明確に示しています。

高市早苗氏は、防衛パートナーシップの強化、防衛予算の増額、自衛隊のより積極的な役割を掲げた、積極的な外交・安全保障政策を前進させています。

安倍政権下で標準化された政策、特にインド太平洋地域における日本の戦略的役割に関する考え方は、現在では高市氏の政策思考の基盤となっており、制約ではなく方向性を示すものとなっています。

こうした継続性は、日本が外部からの脅威と国内政治の再編という両面で直面する状況の中で現れています。

公明党が26年間にわたる自民党との連立を突然離脱したのは、高市氏の強硬な政策方針と、従来の平和主義からの逸脱に対する不快感の表れとされています。

少数派の立場を克服するため、高市早苗氏は日本維新の会(維新)との新たな連立を結成しました。維新が掲げる行政改革、地方分権、防衛力強化、憲法改正といった優先課題は、高市氏自身の方針と密接に一致しています。

この連携により、公明党がかつて課していた外交・安全保障面での制約がなくなり、自民党と維新による連立政権は、より大胆な国際的姿勢を取る余地が広がりました。その結果、高市氏は従来実施が困難であった政策を前進させることが可能となっています。

変動する国家情勢

日本では世代交代が進む中、有権者の意識も変化しています。第二次世界大戦の記憶を持たない若年層は、中国の台頭や北朝鮮のミサイル計画、国際秩序の不安定化を脅威と認識しています。

こうした世代は、日本の防衛力強化の必要性をより受け入れる傾向があり、このような状況下での高市氏の積極的な姿勢は、政治における異例のものではなく、新しい社会的現実の反映といえます。

防衛大臣に小泉進次郎氏を任命したことは、この状況下での慎重にバランスを取った対応を示しています。小泉氏は幅広い支持層に受け入れられる保守派であり、防衛政策を積極的に推進する政権にとって理想的な人選とされています。

高市早苗氏の国際舞台での活動は、国内での任命以上に注目を集めています。

東京でのトランプ米大統領との会談は、意図的な象徴性にあふれたものでした。

安倍氏の足跡をたどる形で、高市氏はトランプ氏個人に訴える演出を整えました。

具体的には、東京タワーやスカイツリーを米国旗の色にライトアップし、トランプ氏が好む通訳を手配、さらに安倍氏のパター用クラブに加えて、金色のゴルフボールを贈呈するなどの演出を行いました。

トランプ氏と高市首相は明らかに良好な関係を築き、互いに親密さを示す仕草を見せながら腕を組んで歩くなど、双方の信頼関係をアピールしました。

また、マリーンワンでの共同移動や、米空母ジョージ・ワシントン号での公的な登場も、両者の円滑なパートナーシップを印象づける場となりました。

高市氏はトランプ氏の支持を得るため象徴的な演出を行いましたが、実質的な政策面では妥協しませんでした。

批判者が懸念した譲歩を避け、既存の貿易条件も変更せず、むしろ日本の政策に沿った形で二国間議題を調整することに成功しました。

これには、重要鉱物のサプライチェーン強化へのコミットメントも含まれていました。高市氏はまた、トランプ氏からのロシア産LNG輸入停止の圧力にも屈せず、日本はエネルギー需要の9%をロシア産に依存していることや、サハリン2プロジェクトに関わる日本企業への影響を説明しました。

この対応は、高市氏の外交的な魅力が戦略的な服従を意味するものではなく、「日本第一、しかし日本だけではない」というリーダー像を目指していることを示しています。

この姿勢は、ワシントンとの緊密な協力を維持しつつ、日本の自立性を守る安倍氏の戦略的アプローチを彷彿とさせます。

しかし、高市氏が政権運営を行う環境は以前とは大きく異なります。再びトランプ政権下で米国が取引優先のアプローチを強め、中国が地域海域でより積極的な姿勢を示す中で、日本の多角的なパートナーシップの必要性はこれまで以上に高まっています。

安倍政権時代と比べると、中国は現在、より強硬で影響力の大きい存在となっており、その力は以前にも増して敏感な局面に置かれています。

実際、高市氏は今月の国会で、中国が台湾に対して軍事行動を取った場合、「生存を脅かす事態」となり得ると指摘し、日本が「集団的自衛権」を行使して軍事行動を取らざるを得ない可能性があると述べています。

この発言とそれに伴う強い反応を受けて、中国も経済的・外交的な圧力手段を発動しました。

高市氏の政権発足初期の動きは、トランプ氏との個人的な外交関係が同盟に不可欠である一方で、日本の独自の利益を確保する余地を維持することも同様に重要であることを理解していることを示しています。

まさにこの政治的なバランスの中で、安倍氏から受け継ぎつつも新たな制約によって形作られた高市氏の外交哲学が最も明確に表れています。

中堅国間で浮上する戦略的情勢

高市氏が直面する戦略的環境は、分断と不安定性、複数の危機、中堅国が決定的な役割を果たす再興という特徴を持っています。

安倍氏が描いた世界—米国が安定した基軸で、中国の台頭は予測可能で、中堅国はルールに基づく秩序に依拠できる—は、大きく変化しています。

現在、米中対立は多くの緊張軸の一つに過ぎません。

エネルギー不安、ウクライナ戦争、中東での紛争、グローバルサプライチェーンの不確実性、多国間機関の機能低下などが重なり、柔軟で多面的、かつ多方向的な外交を展開できる国家が、ますます国際的な結果を形作る状況となっています。

トルコ、インド、インドネシア、南アフリカ、ブラジルは、地域の安定を支え、接続性を促進する重要な役割を担う国として存在感を示しています。

同時に、これらの国々は国際的な地位の向上を目指すとともに、新たな経済・安全保障回廊の開発にも取り組んでいます。

これらの国々は、戦略的自立を求める共通の志で結ばれています。しかし、主要国との関係を維持しつつ従属しないという共通の課題にも直面しています。

高市政権下の日本は、米国や地域に縛られない外交を追求する、より積極的な中堅国として行動することになるでしょう。

ロシア産LNGの輸入停止を拒否したことは、高市氏が必要に応じてワシントンに対しても異議を唱える意志を示しています。また、防衛予算の増額計画は、より広範な安全保障上の役割を果たそうとする意図を示唆しています。

重要鉱物に関するトランプ氏との合意は、インド太平洋地域での経済的依存関係を多様化によって再構築しようとする取り組みを示しています。

日本の選択は、中堅国の間で広がる多元的外交への世界的なシフトと一致しており、これはトランプ氏の取引優先のアプローチ、中国の増大する主張、そしてロシアによるウクライナ侵攻から得られた教訓によって促されています。

こうして高市政権下の日本は、20世紀の地政学的パターンが解体され、新たな国際構図が形成されつつある時期に台頭しているといえます。

東京で起きている動きは、中堅国間の再編成の一環であり、単独の事象ではありません。

トルコはユーラシアの中心に位置しており、一方、日本は太平洋の縁にあります。しかし、中央アジアのエネルギー回廊から海上貿易ルートに至るまで、両地域を結ぶ戦略的回廊の重要性はますます高まっています。

今後10年間で、これらの回廊を越えて協力する中堅国は、戦略的な相補性と影響力において大きな優位性を持つことになるでしょう。

こうした広い文脈の中で、高市政権下の日本は、アンカラに対して新たな機会や協力の分野を創出しています。

トルコがNATO、ロシア、湾岸諸国、アジアとの関係を調整する多元的外交を追求する一方で、日本もパートナーシップの多様化を目指しており、両国は自然な協力関係の相手として浮上しています。

こうした利害の収束は、両国の戦略的関係をさらに深化させる道を開くものとなります。

情報源:TRT World and Agencies