クマによる被害が日本各地で急増しており、鹿角市(秋田県)では自治体が支援を要請した結果、陸上自衛隊による作業が5日から始まりました。
一方、富山市では住宅地近くでのクマ目撃を受け、「緊急銃猟」が決定され、クマ1頭の駆除が行われました。この一連の動きは、日常生活にも影響を及ぼす深刻な状況を映し出しています。
秋田県・鹿角市での自衛隊支援
秋田県と陸上自衛隊第9師団は、箱わなの運搬・設置や猟友会メンバーの輸送、駆除したクマの搬出など、今月末までの間、支援を行う協定を締結しました。
秋田県知事の鈴木健太氏は、「要望から1週間ほどで協定に至り、少しでも被害を減らせるよう自衛隊の活動をしっかりバックアップしていきたい」と述べました。
鹿角市の笹本真司市長も「市職員や猟友会が疲弊しているので、大変感謝している」と語り、自衛隊の到着を歓迎しました。
住民には「夜間は外出を控える」「山あいの森林には近づかない」「鈴を携帯してクマに人の存在を知らせる」といった注意が呼びかけられています。
県内では今季8,000件を超えるクマ目撃情報が報告され、昨年比で約6倍の状況となっており、自治体の対応も限界に近づいているとの声が上がっています。
富山市での「緊急銃猟」実施
富山市栗山地区では、5日午前6時20分ごろにクマ1頭が目撃され、市はすぐに住民に避難を呼びかけるとともに雑木林周辺での交通規制を実施しました。午前9時22分、市長が「緊急銃猟」による発砲を許可し、約1時間後に猟友会のメンバーがクマ1頭を駆除しました。住宅地からほど近い場所での実施で、けが人はいませんでした。富山市で緊急銃猟が行われるのは今回が2例目です。
この措置は、クマが人里に近づいた結果としての迅速な対応であり、「通常のわな設置では間に合わない」という自治体の判断が背景にあります。
背景にある危機的状況
全国的に見ても、クマによる人身被害は過去最大規模に達しています。2025年度(4月以降)だけで、国内でのクマによる死亡者数は10人を超え、被害件数・死亡数ともに記録を更新しています。
専門家らは、以下の要因を指摘しています:
山林でのクマの主要な餌となるブナの実やドングリなどの収穫不振、
地方の過疎化・高齢化による人里と山林の境界があいまいになったこと、
森林・山間部から人の居住地へのクマの進出が深刻化していること。
また、狩猟を担う猟友会のメンバーも高齢化が進み、駆除体制の維持が難しくなっています。
クマ被害の拡大を受け、秋田県・富山市といった地域では、自治体による従来型の対応を超え、自衛隊の動員や緊急銃猟など“非常措置”に踏み切っています。
これは野生動物対策において「日常の枠」を超えた対応が必要とされていることを示しています。
今後は、箱わな設置や駆除のみならず、住民の避難・通報体制の強化、クマの生態を踏まえた長期的な共存策の検討も不可欠です。
国としても、狩猟資格者の増員や法整備を含めた幅広い対策を緊急に講じる必要があります。住民も、いつどこでクマと遭遇する可能性があるかを意識し、防災対策の一環として備えることが求められています。




