芸術と文化
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能楽の古典『風姿花伝』、日本政府がユネスコ「世界の記憶」登録を正式推薦へ
本書の中では、能の“花”という比喩を用いて、演技・舞・謡(うたい)・所作などに宿る「奥義」や「本質」が語られており、単なる記録ではなく、深い芸術思想と実践の指針が示されています。
能楽の古典『風姿花伝』、日本政府がユネスコ「世界の記憶」登録を正式推薦へ
能という伝統芸能は、過去から現代へ、そして未来へと受け継がれてきた「生きた芸術」です。/ 写真: ロイター
2025年11月26日

日本政府は、能楽の大成者・世阿弥が15世紀初頭に書き残したとされる演劇論書『風姿花伝』を、ユネスコの「世界の記憶」計画に推薦する方針を固めました。

文化庁によると、『風姿花伝』は現存する演劇関連の自筆資料として世界でも最古級と評価されており、今回の推薦はその歴史的価値を国際的に明確にする狙いがあります。

『風姿花伝』は、能の演技法、曲目体系、観客に向き合う心構えなど、総合的かつ多角的な理論を記した全七巻の論書です。世阿弥の美意識を象徴する「花」の概念を中心に、舞台芸術に必要な身体性や魅力を示した点が特徴とされます。

今回推薦されるのは、世阿弥の後裔にあたる観世流家元に伝わる、自筆本2冊と書写本1冊の計3点で、いずれも能の創成期を知る上で極めて貴重な資料です。

現代の演出家からも高く評価されており、日本文化の基層にある「身体と芸」の思想を世界に伝える文献として注目されています。

なお、能楽そのものは2008年、世阿弥・元雅父子により大成された舞台芸術として、ユネスコの「無形文化遺産」に登録されています。

政府はまた、1945年8月の原爆投下後の広島の惨状を記録した写真・映像資料の一式についても、2023年に続き再び「世界の記憶」への推薦を行うと発表しました。

ユネスコの審査会は2年ごとに開かれますが、これらの資料は今年の会合では一部加盟国の反対を理由に審査対象とならなかったとされています。

『風姿花伝』と広島関連資料の推薦は、2027年に予定されている審査で正式に検討される見通しです。日本はこれまでに、朝鮮通信使に関する外交文書など、9件の資料が「世界の記憶」登録を受けています。

情報源:毎日新聞