2025年10月6日、スウェーデン・ストックホルムで、ノーベル生理学・医学賞の受賞者が発表され、日本の坂口志文氏が米国のメアリー・E・ブランコウ氏、フレッド・ラムズデル氏とともに受賞しました。坂口氏は大阪大学免疫学フロンティア研究センターの特任教授で、長年にわたり免疫系の仕組みの解明に取り組んできました。
坂口氏は、末梢免疫耐性に関与する「制御性T細胞(Treg細胞)」を発見し、その機能を解明した功績が評価されました。Treg細胞は自己免疫疾患の抑制や、がん免疫療法の研究に欠かせない重要な役割を果たしており、坂口氏の研究は治療法の新しい可能性を切り開いたとされています。
受賞後、大阪大学で行われた記者会見で坂口氏は、「このような名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います」と述べ、研究資金の確保に苦労した経験も振り返りました。
また、「今後は免疫の抑制と活性化のバランスをさらに探り、がんや自己免疫疾患の治療法開発に貢献したい」と抱負を語りました。
坂口氏は1990年代から免疫学研究に従事しており、国際的な学会や論文で高い評価を受けています。
彼の発見は、現在世界中で進行中の臨床試験にも応用されており、Treg細胞を活用した新しい治療法の開発が期待されています。

ノーベル賞は毎年、科学、文学、平和、経済の各分野で顕著な功績を挙げた研究者や団体に贈られる世界的に権威ある賞です。
坂口氏は、「私一人の功績ではなく、同じ考えを持つ世界中の研究者を代表しての受賞だ」と語り、「受賞を通じてこの分野の研究がさらに進み、臨床で応用される方向に進展することを望んでいる」と期待を示しました。
最後に坂口氏は、科学者を志す子どもたちへのメッセージとして、「興味を持ち続けることで理解が深まり、考えが洗練されていく。興味のあることを大切にすると、新しい発見が見えてくる。気づけば面白い境地に達している」と語り、若い世代への励ましの言葉で締めくくりました。
坂口氏の受賞は、日本の免疫学研究の国際的評価をさらに高めるとともに、今後の医療分野における新たな展開を示すものとなりました。