古都・京都の人気と新たな課題
京都は長年、修学旅行先として不動の人気を誇ってきました。寺社仏閣や伝統文化を学ぶ機会が豊富で、教育的な意義が大きいと評価されてきました。しかし近年、国内外からの観光客が急増し、街の混雑が深刻化しています。その結果、一部の学校では京都を修学旅行先から外す動きが出ています。
観光客混雑が招く不便
2024年、京都を訪れた観光客は約5,600万人にのぼり、過去最高水準に迫りました。一方、修学旅行で訪れた生徒数は前年より減少し、約75万人にとどまりました。学校側は、次のような課題を指摘しています。
観光地やバス停の混雑で移動が大幅に遅れる
入場待ち時間が長く、予定通りに見学できない
生徒が疲労し、学習効果が薄れる
ある中学校では、金閣寺周辺の混雑でバス利用を断念し、生徒が徒歩で13キロ移動する事態も起きました。
代替先として広がる地方旅行
こうした事情から、京都以外を選ぶ学校が増えています。例えば、東京都内の中学校は来年度の行き先を奈良・京都から四国に変更しました。四国では、うどん作りや鰹の藁焼き体験など、地域に根ざした学習ができることが魅力です。さらに、金沢や函館といった都市も、交通アクセスと教育的価値を兼ね備えた選択肢として注目を集めています。
関係者の声と対応策
引率教員からは「学習より混雑対応に追われる」との声が上がり、保護者からは「長時間待ちによる体調不良」を懸念する意見が聞かれます。一方で、生徒は「友達と行ければ場所は問わない」と前向きな反応も見られます。観光と教育の両立に向け、次のような対応策が模索されています。
修学旅行シーズンの分散
観光地のルート再編と混雑緩和策
地方自治体による体験型プログラムの充実
旅行費用の高騰に対応する工夫
修学旅行の質を守るために
京都は依然として魅力的な学習の場である一方、観光客の集中によって修学旅行の本来の目的が損なわれつつあります。教育的価値を確保するためには、観光地側の混雑対策と、学校側の柔軟な行き先選びの両立が不可欠です。修学旅行が「学びと体験の場」として継続できるよう、今後は京都と地方の双方で新たな取り組みが求められています。